月の黄経(つきのこうけい)とは?定義・計算・朔弦望との関係
春分点を基準とした黄道上の月の角度。朔弦望(新月・上弦・満月・下弦)の計算基準となる天文暦の核心概念
今日の月黄経
月の黄経は、春分点(0°)を起点として黄道に沿って測った月の角度位置です。1朔望月(約29.53日)かけて0°から360°へと1周し、これが月の満ち欠けを決定づけます。上記の円盤は現在の月の黄経の位置を示しており、0°(春分)を上、90°(夏至)を右、180°(秋分)を下、270°(冬至)を左に配置しています。月は1日に約13.2°東へ進むため、太陽より早く移動します。
今後の朔弦望(黄経差0°・90°・180°・270°)
| 日付 | 曜日 | 時刻 | 月相 | 黄経差 |
|---|---|---|---|---|
| 8月20日 | 木 | 11:46 | 🌓 上弦 | 90° |
| 8月28日 | 金 | 13:18 | 🌕 望(満月) | 180° |
| 9月5日 | 土 | 16:51 | 🌗 下弦 | 270° |
| 9月11日 | 金 | 12:26 | 🌑 朔(新月) | 0° |
| 9月19日 | 土 | 05:43 | 🌓 上弦 | 90° |
| 9月27日 | 日 | 01:48 | 🌕 望(満月) | 180° |
| 10月4日 | 日 | 22:25 | 🌗 下弦 | 270° |
| 10月11日 | 日 | 00:50 | 🌑 朔(新月) | 0° |
目次
月の黄経とは
月の黄経(つきのこうけい)とは、春分点を基準(0°)として、黄道(太陽の通り道)に沿って測った月の角度位置のことです。国立天文台の暦Wikiでは「黄経は春分点の方向を基準に0°から360°まで測ります」と定義されています。
地球から見ると、月は1朔望月(約29.53日)かけて天球上を1周します。月の軌道は黄道(地球の公転面)に対して約5.14°傾いた「白道(はくどう)」を通りますが、黄経は黄道に沿って測るため、月の黄道座標上の位置を表します。月の黄経は1朔望月かけて0°から360°へと変化し、これが月の満ち欠け(朔弦望)を決定づけます。
月の黄経の基本概念
- 基準点:春分点(0°)= 天の赤道と黄道の交点の一つ
- 測り方:黄道に沿って東回り(月の進む方向)に0°〜360°
- 1日の進み:約13.2°(360°÷29.530589日)
- 周期:1朔望月(約29.530589日)で1周
黄道座標系と白道
月の黄経を理解するには、黄道座標系と白道(はくどう)という2つの概念を知る必要があります。国立天文台の解説によれば、黄道座標系は太陽系の天体がほぼ同じ面(黄道面)上を運動することから、この面を基準に天体の位置を表す座標系です。
黄道座標系の2つの座標
- 黄経(こうけい・λ):春分点を基準に黄道に沿って0°〜360°で測る経度
- 黄緯(こうい・β):黄道面を0°として、北へ+90°、南へ-90°で測る緯度
太陽は常に黄道上を運動するため太陽の黄緯はほぼ0°ですが、月の軌道は黄道面に対して約5.14°傾いているため、月の黄緯は-5°〜+5°の範囲で変化します。月の位置は主に「黄経」で表されますが、日食や月食が起きるかどうかを判定するには黄緯も考慮する必要があります。
黄道と白道
黄道は天球上の太陽の通り道(地球の公転面の天球への投影)で、白道は月の通り道(月の公転面の天球への投影)です。白道は黄道に対して約5.14°傾いており、この2つが交わる点を「黄白交点(昇交点・降交点)」と呼びます。黄白交点は約18.6年かけて黄道上を一周するため、日食・月食の起こりやすさが長周期で変化します。
朔弦望と月の黄経
朔弦望(さくげんぼう)は、月の満ち欠けの4つの節目を指し、それぞれ「太陽と月の黄経差」で定義されます。国立天文台の暦Wikiでは「朔→上弦→望→下弦はそれぞれ黄経の差が0°・90°・180°・270°になること、あるいはその瞬間を指します」と定義されています。
月齢との関係
月齢(げつれい)は、朔(新月)の瞬間からの経過時間を日数で表したものです。月の黄経と太陽黄経の差(黄経差)から概算することができます。
月齢の計算式
月齢 ≈ 黄経差 ÷ 360° × 29.530589日
ただし、月の軌道は楕円形で公転速度が一定ではないため、黄経差と月齢は完全に比例しません。例えば、上弦(黄経差90°)の月齢は平均7.38日ですが、実際には6.5日〜8.5日程度の幅で変動します。同様に、望(黄経差180°)の月齢は平均14.77日ですが、13.9日〜15.6日程度の幅があります。
当サイトの月齢について
当サイトでは、月齢・月の満ち欠けのページで、寿星天文暦に基づく高精度アルゴリズムにより月齢を計算しています。また、新月(朔)と満月(望)の詳細ページでは、2026年・2027年の正確な日時を国立天文台暦要項と±1分以内で一致する精度で掲載しています。
月の満ち欠けの名称
日本では古くから、月齢や月相に応じて様々な名称が付けられてきました。万葉集や源氏物語などの古典文学にも登場し、日本人の美意識と深く結びついています。以下に主な月の名称を一覧で紹介します。
| 月齢 | 名称 | 別名 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 0.0 | 朔(さく) | 新月 | 月と太陽が同じ方向に並び、地球からは暗い面が見える。月齢0。 |
| 1.0〜2.0 | 繊月(せんげつ) | 二日月 | 朔の翌日に現れるごく細い月。夕方の西空にわずかに見える。 |
| 2.5〜5.0 | 三日月(みかづき) | 哉生明(さいせいめい) | 細い弓形の美しい月。夕方西の空に見える。 |
| 7.0〜8.5 | 上弦(じょうげん) | 半月・弓張月 | 月の右半分が光って見える。黄経差90°。 |
| 9.0〜12.0 | 十日余りの月 | — | 上弦から望の間のほぼ満ちた月。 |
| 12.5〜13.5 | 十三夜月 | 栗名月・後の月 | 旧暦9月13日の月。望の前夜にあたる月。 |
| 14.0〜14.8 | 小望月 | 待宵月(まつよいづき) | 望の前日の月。ほぼ満月に近い。 |
| 14.8〜15.2 | 望(ぼう) | 満月・十五夜 | 月と太陽が反対方向にあり、全面が光る。黄経差180°。 |
| 16.0〜16.5 | 十六夜(いざよい) | 哉生魄(さいせいはく) | 望の翌日の月。月が出る時刻が約50分遅くなる。 |
| 17.0〜17.5 | 居待月(いまちづき) | — | 十六夜の翌日。月が出るのを座して待つ意。 |
| 18.0〜18.5 | 寝待月(ねまちづき) | 臥待月(ふしまちづき) | 居待月の翌日。寝ながら月の出を待つ時刻まで遅れる。 |
| 19.0〜20.0 | 更待月(ふけまちづき) | — | 更け方にのぼる月。望から数えて4日目以降。 |
| 21.0〜22.5 | 有明の月 | — | 夜更けから明け方にかけて見える月。 |
| 22.0〜23.5 | 下弦(かげん) | 半月・弓張月 | 月の左半分が光って見える。黄経差270°。 |
| 24.0〜26.5 | 二十六夜月 | — | 下弦の後の細り始めた月。 |
| 27.0〜29.0 | 有明月 | — | 明け方に残る細い月。朔に近い。 |
2026年の朔弦望一覧(月の黄経差基準)
以下は2026年の朔弦望を、太陽と月の黄経差が該当角度に達した日時(日本標準時)で一覧にしたものです。当サイトの計算は寿星天文暦に基づき、国立天文台「令和8年(2026)暦要項」と±1分以内で一致することを検証済みです。
| 月相 | 黄経差 | 日付 | 曜日 | 時刻 |
|---|---|---|---|---|
| 🌕 望(満月) | 180° | 1月4日 | 日 | 19:02 |
| 🌗 下弦 | 270° | 1月11日 | 日 | 00:48 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 1月19日 | 月 | 04:51 |
| 🌓 上弦 | 90° | 1月26日 | 月 | 13:47 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 2月2日 | 月 | 07:09 |
| 🌗 下弦 | 270° | 2月10日 | 火 | 21:43 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 2月18日 | 水 | 21:01 |
| 🌓 上弦 | 90° | 2月25日 | 水 | 21:27 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 3月4日 | 水 | 20:37 |
| 🌗 下弦 | 270° | 3月12日 | 木 | 18:38 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 3月19日 | 木 | 10:23 |
| 🌓 上弦 | 90° | 3月26日 | 木 | 04:17 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 4月2日 | 木 | 11:11 |
| 🌗 下弦 | 270° | 4月10日 | 金 | 13:51 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 4月18日 | 土 | 20:51 |
| 🌓 上弦 | 90° | 4月24日 | 金 | 11:31 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 5月2日 | 土 | 02:23 |
| 🌗 下弦 | 270° | 5月10日 | 日 | 06:10 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 5月17日 | 日 | 05:01 |
| 🌓 上弦 | 90° | 5月24日 | 日 | 20:10 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 6月1日 | 月 | 17:45 |
| 🌗 下弦 | 270° | 6月9日 | 火 | 19:00 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 6月15日 | 月 | 11:54 |
| 🌓 上弦 | 90° | 6月22日 | 月 | 06:55 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 6月30日 | 火 | 08:56 |
| 🌗 下弦 | 270° | 7月8日 | 水 | 04:28 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 7月15日 | 水 | 18:43 |
| 🌓 上弦 | 90° | 7月22日 | 水 | 20:05 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 7月30日 | 木 | 23:35 |
| 🌗 下弦 | 270° | 8月6日 | 木 | 11:21 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 8月13日 | 木 | 02:36 |
| 🌓 上弦 | 90° | 8月20日 | 木 | 11:46 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 8月28日 | 金 | 13:18 |
| 🌗 下弦 | 270° | 9月5日 | 土 | 16:51 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 9月11日 | 金 | 12:26 |
| 🌓 上弦 | 90° | 9月19日 | 土 | 05:43 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 9月27日 | 日 | 01:48 |
| 🌗 下弦 | 270° | 10月4日 | 日 | 22:25 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 10月11日 | 日 | 00:50 |
| 🌓 上弦 | 90° | 10月19日 | 月 | 01:12 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 10月26日 | 月 | 13:11 |
| 🌗 下弦 | 270° | 11月2日 | 月 | 05:28 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 11月10日 | 火 | 16:02 |
| 🌓 上弦 | 90° | 11月18日 | 水 | 20:47 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 11月25日 | 水 | 23:53 |
| 🌗 下弦 | 270° | 12月2日 | 水 | 15:08 |
| 🌑 朔(新月) | 0° | 12月9日 | 水 | 09:51 |
| 🌓 上弦 | 90° | 12月17日 | 木 | 14:42 |
| 🌕 望(満月) | 180° | 12月24日 | 木 | 10:28 |
| 🌗 下弦 | 270° | 12月31日 | 木 | 03:59 |
月の黄経の計算方法
月の黄経は、地球から見た月の黄道上の位置を、春分点からの角度として計算します。月の軌道は太陽より複雑で、地球・太陽の重力による多くの摂動項を含むため、高精度な計算には多数の補正が必要です。
計算に含まれる主な補正
- 月の楕円軌道(主要項):月の公転軌道の楕円性による主な変動(振幅約6.29°)
- 出隅(しゅつぐう):太陽の引力による月軌道の歪み(振幅約1.27°)
- 二均差(にきんさ):太陽と月の重力相互作用による変動(振幅約0.66°)
- 周年差:地球の公転軌道の楕円性による影響
- 歳差(さいさ):地球の自転軸の向きが長周期的に変化することによる春分点の移動
- 章動(しょうどう):地球の自転軸の短周期の揺れ
- 光行差(こうこうさ):光の速度による見かけの位置のずれ
- ΔT(デルタティー):地球の自転の不均一性による世界時(UT)と力学時(TT)の差
当サイトの計算方式
当サイトでは寿星天文暦に基づく計算エンジンを使用しています。これはELP2000(月の位置の高精度理論)等に基づく現代的天文計算手法を採用しており、国立天文台暦要項と±1分以内(黄経差で±0.005°以内)で一致する精度を実現しています。
計算の流れは以下の通りです:
- 対象日時をユリウス日(JD)に変換
- ΔTを加えて力学時に変換(地球の自転の不均一性を補正)
- 月の黄経を計算(mLon関数、ELP2000系の主要項を含む)
- 得られた黄経を0°〜360°に正規化
1朔望月の黄経変化
1朔望月(約29.53日)の間に、月の黄経は0°から360°へと1周します。この変化は一定ではなく、月の軌道の楕円性と太陽の重力影響により変動します。
1日の黄経変化量
- 平均:約12.19°/日(360°÷29.530589日)
- 近地点付近:約15°/日(月が地球に近く速く動く)
- 遠地点付近:約11°/日(月が地球から遠く遅く動く)
なお、月の黄経そのものの1日の変化量(約13.2°)と、太陽との黄経差の変化量(約12.19°)は異なります。これは、月が黄経を進む間に太陽も約0.99°進むため、その分だけ差の変化が縮まるからです。
各月相の間隔
朔から上弦、上弦から望、望から下弦、下弦から次の朔までの期間は、平均約7.38日ですが、実際には以下の範囲で変動します:
- 朔 → 上弦:約6.6日〜8.2日
- 上弦 → 望:約6.8日〜8.0日
- 望 → 下弦:約6.7日〜7.9日
- 下弦 → 朔:約6.5日〜8.1日
この変動は、月が近地点付近にあるか遠地点付近にあるかによって生じます。そのため、同じ満月でも「大きく見える満月(近地点満月・スーパームーン)」と「小さく見える満月(遠地点満月・マイクロムーン)」があります。
歴史と暦法
月の黄経の概念は、古代バビロニアの天文学にまで遡ります。バビロニア人は月の運動を詳細に観測し、月の黄経の変化を予測することで日月食を予報していました。この知識はギリシャ・インド・中国に伝わり、それぞれの天文学体系に取り入れられました。
日本における月の黄経計算
日本では、古代より中国から伝来した宣明暦(せんみょうれき)を854年から約800年間使用してきました。宣明暦では月の黄経を計算するために「不定期項(月の運動の不規則性を補正する項)」を用いていましたが、精度は高くありませんでした。
江戸時代前期の1685年、渋川春海(しぶかわ しゅんかい)は中国元代の授時暦を日本の緯度に合わせて改訂した貞享暦(じょうきょうれき)を作成しました。これは日本人が初めて独自に作成した暦で、月の黄経計算の精度が大幅に向上しました。その後、宝暦暦・寛政暦・天保暦と改暦が進み、天保暦(1844年)は太陰太陽暦として非常に高い精度を誇りました。
近代以降
明治6年(1873年)の太陽暦採用後も、旧暦(天保暦)は農事や伝統行事の暦として使われ続けました。現代の日本では、月の黄経計算は国立天文台が精密な天文暦に基づいて行い、暦要項として毎年発表しています。これにより、旧暦の朔日(ついたち)や中秋の名月などの伝統行事の日程が決められています。
現代での利用
月の黄経は、現代の様々な分野で重要な役割を果たしています。
主な利用分野
- 旧暦換算:旧暦(天保暦)の1日(ついたち)は「朔(黄経差0°)の瞬間を含む日」と定義されます。月の黄経と太陽黄経の計算は、旧暦・新暦変換に不可欠です。
- 潮汐予報:朔(黄経差0°)と望(黄経差180°)は大潮、上弦・下弦(黄経差90°・270°)は小潮となります。漁業・海運・釣りなどの分野で重要な情報です。
- 日月食予報:日食・月食は朔・望の瞬間に月が黄白交点付近にある時に起こります。月の黄経と黄緯の精密な計算が必要です。
- 伝統行事:中秋の名月(十五夜)、お盆(旧暦7月15日)、節分、旧正月などの伝統行事の日程は、月の黄経計算に基づく旧暦で決まります。
- 天体観測:月の観測に最適な時期の判断、月が明るすぎて観測に支障する「月明かり」の予測などに使われます。
よくある質問(FAQ)
月の黄経(つきのこうけい)とは何ですか?
月の黄経と太陽黄経の違いは何ですか?
なぜ月の黄経は1日に約13°進むのですか?
朔(新月)・上弦・望(満月)・下弦は月の黄経でどう決まりますか?
月の黄経と月齢の関係は?
黄道と白道(はくどう)の違いは何ですか?
月の黄経はどうやって計算しますか?
恒星月と朔望月の違いは?
月の黄経と潮汐(ちょうき)の関係は?
なぜ朔や望のたびに日食・月食が起きないのですか?
月の黄経は1日にどれくらい変わりますか?
月の黄経と旧暦(太陰太陽暦)の関係は?
まとめ
月の黄経(つきのこうけい)は、春分点を基準(0°)として黄道に沿って測った月の角度位置で、1朔望月(約29.53日)かけて0°から360°へと1周します。月の満ち欠け(朔弦望)は「月の黄経」と「太陽黄経」の差で決まり、朔は黄経差0°、上弦は90°、望は180°、下弦は270°の瞬間です。
当サイトでは、寿星天文暦に基づく高精度アルゴリズムにより、国立天文台暦要項と±1分以内で一致する精度で月の黄経を計算しています。この計算は、旧暦換算・日月食予報・潮汐予報・伝統行事の日程決定など、現代の様々な分野で活用されています。